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QCサークル

やさいしい入門編

客観説TQM研究所-TOP

出張講習

§1 はじめに

  このページは 「QCサークル:やさしい入門編」 と題して、 客観説TQM 第7章が理解しずらいという人のために追加したものです。

  「難しい入門編」 というものもありますか、 などと尋ねられても困るけど。 サークルメンバーにとって 「やさしい、難しい」 を考えてはなりません。

  これを読む人は、 部長・課長などの管理職です。 すなわち、QCサークルを指導する立場の方々に対して正しい知識・考え方を伝えることが、 このページの役目です。

  2007年11月、 名古屋地裁は、 主観説が主張してきた 「QCサークル活動の自主性」 を否定し、 「業務と判断するのが相当」 との判断を示したことは本文で紹介しました。

  これまで、 一貫して自主性を否定してきた学説は、 唯一、 客観説だけです。

  他の学説(主観説)は例外なく、 「自主的活動である」 と言い続けてきました。

  ところが、 主観説が犯している間違いは自主性の問題だけではありません。 ありとあらゆる間違いをしています。

  これを機会に、 QCサークル、 方針管理、 目標管理、 FMEAなど、 いろいろな点で各社の動きが変わってくることが予想されるので、 ここに新たに1ページを追加してみました。

  QCサークルの導入・活性化を考えている方は、 この機会に正しい第一歩を踏み出しましょう。


§2 QCサークルの発足

  QCサークルは、日本発の品質管理(QC)を目的とする職場内のグループ活動です。

  そして、 1980年代 (約40〜30年前) に一時は世界を席巻しました。 アメリカを始めとするどの先進国も、 日本のQCサークルを見習って導入を図りました。

  その背景には、 諸国がうらやむほどの日本の高度成長がありました。

  すなわち、 日本だけがこれほどの発展を遂げる原因を調べると、 そこには 「カイゼン」 によって高品質・低コストを生み出すQCサークルという、 他国には見られない日本独特の職場活動があった (実はそうではないが、 そう見えた) のです。

  QCサークルの制度は、 当時の東京大学教授、 石川馨さんが提唱したものです。

  その当時の日本は、「製品の品質は、十分に検査をすることによって得られる」 と言う考え方であり、 不良品が発見されたら十分に選別することによって良品を出荷するのが常道でありました。

  そして、 製品を作る製造部、 部品や材料を購入する資材部、 製品を売る営業部は品質管理には関係なく、品質管理は検査部門の仕事だと考えられていたのです。

  正しくは、 全ての部門が品質管理をすること、 しかも経営層から管理職、第一線の担当者までの全員が品質管理をすること (全員参加の品質管理) が必要です。

  つまり、「製品を企画する人、 設計する人、 工程を設計する人、 作る人、 買う人、 売る人、 経理をする人などが品質を管理する」 という習慣に改めるには、 どうすればよいか? (注の後に続く)


〔注〕 全員参加 は、 往々にして 「全員集合」、 「全員が一斉に」の意味に誤解されます。

  例えば、 「全員参加だから、 全サークルが発表せよ」 とか、 「全員参加だから、 全員で一斉に機械を清掃せよ」 などという具合に使われることがあります。

  しかし、 「全員参加」 には、 そういう意味はありません。

  私達、 人間の身体は、 心臓・血管・呼吸器・胃・腸など多数の器官から成り立ち、 これらの器官も多数の細胞から成り立っています。 そこには、 「この細胞や器官の働きは、 どうでもいい」 というものはありません。

   どの細胞や器官もちゃんと働いてくれないと、 人間の身体はまともに機能しません。

  企業も同様です。 個々人が細胞で、 人の集まりで係り・課・部などが成り立っています。 そして 誰の仕事も欠陥がないように改善し維持しないと、 企業としてまともに機能しないことになります。 だから、 全員が自己の 「仕事ぶり」 の品質管理をしなければならず、 一部の人の仕事が異常なままに放置されることは許されないと言うことです。

  そこには、 「全員が一斉に」 などという意味は全くありません。 人間の身体をみると、手足の筋肉を休めたり眠っているときでも、 脳の一部や心臓や肺は働いています。


  それには、 今の各職場の状況を観察して、 まずい点を改善することから始めようと考えて、 石川馨さんがQCサークルを提案したのです。

  ところが、 当時の実務界は、 次のような受け取り方でした。

  1. QCサークルだか何だか知らないが、 作業者に改善をやらして大したことが出来るはずがない。
  2. そんな活動を正規の勤務時間中にやられたら、 仕事が止まってしまうではないか。
  3. 自分の勉強のためにやるのは悪いことではないから、 どうしてもやるなら勤務時間外にやってくれ。
  つまり、 会社の仕事であるはずなのに正規の業務とは認めず、 給与の対象にならない時間外自由活動という位置づけを条件に受け入れたのです。
  以上を反映したのが、 日科技連などの雑誌や参考書に掲載されたQCサークル要綱です。
  1. QCサークルとは、 同じ職場内で品質管理活動を自主的に行う小グループのこと。

  2. 全社的品質管理活動の一環として
      自己啓発、 相互啓発を行い
      QC手法を活用して
      職場の管理、改善を
      継続的に
      全員参加で行う。
  この 「自主的」 という言葉が、 時間外の自由活動を意味することになります。

  大学や日科技連などの教育・指導機関は、 こぞって、 QCサークルが自主的活動であることを声高に唱え続けてきたのです。


  社員全員が、 自己研鑽を目的に時間外に改善活動を行って、しかもそれが会社のためになるとすれば、 巨大な 「ただ働き制度」 になり、 安くてよい品質の製品が生産できる。「う〜ん、 うまい仕組みだ」 と、 外国人は感心して唸るばかりでした。

  しかし、 これが大変な間違いだったことが、 その後にバブル経済がはじけて顕著になりました。

 「自主性」 の間違いは、 3つの面で明らかになったのです。 正規の業務ではないから、〜

  1. 時間外で残業手当てがつかず、生じた利益は会社に入る (不当労働行為)。
  2. 管理職が本業の日常管理をQCサークルに任せて、手を出さなくなる (職務怠慢)。
  3. 時間外では大した改善ができず、 ウソ発表がはびこる (人間性の喪失)。
  以下、 これらを簡単に説明しましょう。
  その前に、 従来、 QCサークルが自主的活動であると説いてきたサイトを拾ってみよう。

  日科技連 / 神田紀昭氏 /上田利男氏/ 東京都病院経営本部 /石井和克研究室 / ブレインダイナミックス / Buzzwords〜他、無数

  そして、 自主性の結果として、 次の成果を導くとしています。

  1. 人間の能力を発揮し、 無限の可能性を引き出す。
  2. 人間性を尊重して、 生きがいのある明るい職場をつくる。
  3. 企業の体質改善・発展に寄与する。
  すなわち、 「ただ働きで過労死するケース」 とか、「ウソ発表」 などには全く触れません。 机上の空論か、 実務経験に基づいた話か、 読む側がよほど注意しないと騙されます。

  問題は、 QCサークル活動を自主的活動であるとして指導してきた主観説の身の振り方です。

  なになに? 「自主的活動」 という部分を削除すれば十分ではないかって? どっこい、 そうは行きませんね。

  1.自主的活動だというから、 部長・課長はタッチしてこなかった。 いま、 「実は、 正規の業務だから各職場の管理職が指導せよ」 といわれても、 何もしてこなかった管理職には指導ができない。

  2.部課長などの管理職は日常管理を担当する職位ですが、 QCサークルも、 それと同じ日常管理をするグループです。

  そのQCサークルが、 管理職から独立した組織であり管理職の指導も受けないし命令も受けない自由な活動をするなどということは、 理論上あり得ないことです。 この明白な矛盾に気がつかない程だから、 他にも多数の間違いがあるに違いありません。

  3.その多数の間違いを記載した著作物や誤った指導をしたセミナーについての後始末をどうするかというのも、 大きな問題です。

  このページでは、 その多数の間違いの一部を指摘しながら、 正しい活動の仕方を説明しています。


§3 自主性の3弊害

  (1)不当労働行為
  2007年11月、 勤務中に急死したトヨタの社員の過労死について、 名古屋地裁は客観説を採用して、 QCサークル活動を 「業務と判断するのが相当」 との判断を示しました。 これに従い豊田労基署は、 3カ月で150時間あまり時間外労働が増えたと認め、 遺族年金などを支給しました。

  なぜ、 正規の業務なのかというと、 「やりなさい」 という会社の命令でやっており、 成果も会社がほとんど全部奪ってしまうからです。

  QCサークル発足当時は成果など期待できないから業務外とする条件をつけたが、 成果が出るようになったらこの条件を外さねばならなかったのに、 学者や指導機関は誤った理論を放置してきたのです。

  命令でやらせているのに 「自主的という仮面」 を被せてウソをついてきたということです。

  (2)管理職の怠慢
  課長や部長などの管理職は、 その部なり課なりが担当する分掌業務(=日常業務)に、 トラブルやムリ・ムラ・ムダがないように管理するのが本来の任務です。 これを日常管理といいます (注: 日常業務と日常管理は、 明確に区別すること)。

  ところが、 現代のように高度で複雑多彩な仕事になると、 課長や部長がいくら頑張っても、 十分な日常管理はできないのが普通です。

  ムリ・ムダ・ムラを残らず拾い上げ、 データを収集し、 分析して改善策を打つ。 しかも、品質Q・コストC・納期D・安全S・環境保護Eなど、 どれも疎かにできません。

  そこで考えたのが 「日常管理を行うQCサークル」 です。 トラブルのデータ収集、 解析、 対策〜などをQCサークルにやって貰えば大変に助かるワケです。


  ところがQCサークル活動が正規業務ではないとすると、 部長や課長は口出しができません。 現に、 管理職が指導しようとすると、 「QCサークルは自主的活動だから口出しをしないで下さい」 などと苦情が寄せられたものでした。

  こうして、 管理職は、 本来の日常管理に手を出さず、 「何をしたらよいか分からない」 という不思議な職種になってしまい、 多くの会社で職場の日常管理が放置された状態に陥ったのです。

  その穴を埋めるように、 管理職にうってつけの仕事が生まれました。それが方針管理、および、目標管理です。

  しかも誤った教育が行われ、 管理職もウソ発表に忙しく奔走することになったのです。

  方針管理や目標管理の誤りとウソ発表については、 ここではこれ以上触れませんが、 これも大学と指導機関によって経営者や管理職が教育され、 大変な被害を蒙りました。

  (3)改善の停滞とウソ発表の横行
  QCサークルは、 QCストーリーの手順に従って活動し、 QCストーリーの手順の通りに発表するように義務付けられます。

〔問題解決型QCストーリー〕
  1. テーマ
  2. テーマ選定理由
  3. 現状把握
  4. 目標設定
  5. 活動計画と実績
  6. 要因分析
  7. 対策の立案と実行
  8. 効果の確認
  9. 反省と今後の計画
〜等々の発表手順が決められており、 この通りの項目・順序で発表することが義務付けられます。

  ところが、 3つの原因でウソ発表が蔓延して行きます。


  • 週1時間程度の時間外の活動では、 大きな成果は得られません。
      なるほど、 当初の頃はやさしい改善でよかったら適当にやれば済んだが、 会社が次第に大きなノルマを課すようになり、 時間外では到底不可能な成果を求めるようになるのです。

  • QCストーリーが、 さまざまな点で活動の実態と合わない。
      「QCストーリー通りに発表する」 と言う意味は、 もしQCストーリーと違う活動をした場合でも、 あたかも従った素振りをすることになります。

  • ウソか本当か、 調べないし証明もいらない。
      審査員はウソ話であろうが、 とにかくベタ褒めをして 「やる気」 を失わないように励まさねばならない。 従って、 ウソ話で華やかにデータを飾ってQC7つ道具でプレゼンテーションをするイベントに成長していきました。
  •   こうして華々しい目標を掲げてはウソ発表を繰り返し、 本当の改善は手つかずのままに放置されることが多かったのです。

      勿論、 中には本当に改善をしたサークルもあったことは確かです。 だけど、 本当に改善をした場合でも、 サークルが発表した内容が全て真実かというと、 それはQCストーリーの構造からしてあり得ないのです。

      例えば 「慢性不良の削減」 で、 原因が分からないから、 いつ頃何をするか事前に計画が立たないはずだし、 結果も分からないはずです。

      原因除去の対策を打つかも知れないし、 原因を問わずに新たな方法に切り替えるかも知れない。 だが不思議なことに、 事前に活動計画を立て、 事前に目標を立て、 しかもほぼ達成されるというあり得ない成功談ばかりです。


    §4 フィードバック管理

      改善には、規模によって2つの種類があります。

  • 日常管理 ─ 毎日繰り返す決まった仕事(日常業務)について、 人材・設備などの従来の経営資源を大きく変えないで、 従来の枠の中で可能な限りトラブルや損失が起きないように管理すること。 課長や部長 (管理職) が少ない費用で行います。
     これが管理職の本来の仕事であり、かつ、 QCサークルの仕事です。

  • 方針管理 ─ 人材・設備などの従来の経営資源を大きく変えて、 飛躍的に改善すること。 トップの方針として全社的な規模で担当し、 多くの場合に大金を投資します。
     日常管理と違って、原価30%減とか、 不良ゼロとか、 画期的な新製品を企画するとか、 従来の枠を超えた飛躍的な改善を図る活動です。

      以下、 少し詳しく説明すると、

  •   (1)日常管理
      改善の必要性(ニーズ・願望・ノルマ) があるとき、 「費用をあまりかけないで、 どこまで改善できるか、 やれるところまでやろう」 という活動です。

      原則、 どこまで改善できるか、 取り組んでみなければ分かりません。 事前に対策が分かっている場合もあれば、 検討してようやく発見することもあれば、 検討してもダメな場合もあります。 とにかく考え方は、PDCA管理サイクル、

    1. 計画:Plan (A案を実行してみよう)
    2. 実行:Do (実行する)
    3. 点検:Check(結果は失敗だ)
    4. 行動:Act (では、次にB案をやってみよう)
    〜を繰り返して策が尽きるまで続けます。 A案だけで落ち着いたりB,C,Dと続いたり、 一般には予測がつきません。

      これはいわば試行錯誤であって、 とにかくやってみて、 結果を見てから次の行動を決めよう、 というアプローチです。 このやり方をフィードバック管理 といい、 目標を設定しないやり方 です。

      当然、 失敗も考慮し、 「失敗なら失敗したで、 そのときに手を考えればよい」 ということだから、 逆に言えば、 あまりお金をかけない場合に限定されるわけです。

      失敗かも知れないし、 ある程度の効果が出るかも知れないから、 結果は予測できません。

      だから、 目標は立たないのが普通です。 QCストーリーに 「目標の設定」 とあるけれど、 QCストーリーは日常管理用と方針管理用があり、 目標を設定するのは正しくは後者の場合だけです。

      QCサークル活動も日常管理だから、 目標を設定しないのが正しいやり方です。

      当初の頃のQCストーリーには 「目標の設定」 はなかったのです。 それが、 目標を誤解した一部の学者の暴走で、 途中から目標が挿入されるようになって、 誤りを加速することになりました。

      もっとも、 PDCA管理サイクルを適用する場合でも、 目標を設定すべき場合があるのではないか、 との疑問を持つ人がいるかも知れません。

      しかし、それはありません。 なぜなら、 目標を設定するには、 結果がかなり明確かつ最善な手段を計画実行前に確定しなくてはなりませんが、 そのような手段を確定するのであれば管理サイクルは不要だからです。


     (2)方針管理  方針管理は飛躍的な改善を狙って、 通常、 大金を投資するから、 失敗は許されません。すると、 PDCA管理サイクルを適用できません。 結果をみて次の行動を考えるのでは取り返しがつかないから、 結果を事前に知って最善を狙わねばならず、「石橋を叩く」 やり方になります。

      これをフィードフォワード管理といい、 具体的に言うと、次のようにして目標を設定します。 なお、いわゆる目標の3要素は間違いです。

    1. A、B、Cと出来るだけ多くの解決案を出す。
    2. それぞれの投資額、 ランニングコスト、 効果、 速度、 安全性、 環境側面などを調べる。
    3. 最善案Bを選定し、 その最善案Bが採用可能かどうか、 判断する。
    4. 最善案Bを採用するなら、 そこで決まった投資額、 ランニングコスト、 予測効果、 速度、 安全性、 環境側面などを目標値として設定する。
      他方で、 「あるべき姿」、「必要なレベル」、「欲しいもの」 などを目標と称するグループがあります(主観説)。
      しかし、 目標とは、 狙う対象をいい、 実現可能で最善の対象を狙います。「欲しい対象」「願望の対象」とは異なります。 このことは、 日常の生活を考えれば明白です。

      私たちの多くは、 水泳プールつきやテニスコートつきの豪邸を欲しいと思います。 しかし、 それを目標に設定して住宅を購入する人は、 普通、 いません。 収入、通勤の便、学校や病院との距離、買い物の便利さなど、 諸々を秤にかけて、 支払う金額に対する最大の見返りを狙います。

      そして、「よし、これで行こう!」 と決定したときに、 狙う対象(目標)が決まります。 このときに決まる目標には、 支払う金銭、獲得する住宅、通勤・通学時間、買い物の便利さなど、 全てが目標であって、 どれが未達成であっても、 その分だけ失敗になります。

      ちなみに、 主観説では、 品質管理における「管理」とはP・D・C・Aのサイクルを事実に基づいて回して行動すること、と定義します(大藤正氏)。 しかし、 この説が正しいはずはありません。 一発勝負のフィードフォワード管理も管理だし、 異常がないか監視することも管理です。


    §5 テーマの棚卸

      各職場に、 数人からなる小集団 (サークル) を作り、 好きな名称をつけます。

      そこで早速テーマを決めて、 半年後の発表に向けてQC手法を学んで活動を開始する、 というようなことを10年も続けると、 大失敗であったことが明らかになります。 なぜ失敗かというと、〜

     1.QC手法を使ったフリをして、 ウソ話を作るようになります。
      なぜなら、 「うまく行きませんでした」 と発表するわけに行かないから、 体裁上、 QC7つ道具を使って成功したように話を作らねばならないからです。 QC7つ道具は、 もっぱらウソ話を作るのに役立つことになります。

     2.QCサークルが選ばなかった 「真に解決すべき問題」 が、 地下に潜って、 手付かずのままに10年も放置されたことに気づきます。

      そうならないためには、 QCサークルを作った後、 テーマの棚卸に入ります。 これは、 小さいテーマ、 大きいテーマ、 何でもいいから解決に値するものを全部列挙するのです。

      そして、 1つ1つのテーマごとに、 それが主に品質Q、 納期D、 コストC、 安全S、 環境Eのどれに関するかを明確にして、 グラフ、 パレート図、 その他のQC手法で図化して表す練習をします。

      つまり改善活動をしないで、 もっぱら現状を説明するためのQC手法を学び、 そこから何を読み取るかを学ぶ。


      一方、 棚卸テーマのうち、 どれはQCサークル、 どれは方針管理、 どれは課長の分担、 と言う具合に品質管理委員会で一応の分担を決める。

       日常管理は、 不良や品質クレームのような品質問題Qだけではなく、コストC・納期D・安全S・環境Dの問題など、 全ての特性 (管理の成果) を問題にしてプロセスを改善せねばなりません。

      私は品質だけ、 君はコストだけ、 という日常管理は存在しません (QDC一体管理の原則)。

      分担を決め方は、 取りかかって見てある程度検討して中身に触れないと判断できないので、 変更が可能という扱いにします。


    §6 取りかかるテーマの選定

      品質管理委員会でQCサークルが担当すると決めた多数のテーマを前にして、 さて、 どれから取り組むべきだろうか?

      従来のQCストーリーでは、 取り組むテーマを何らかの理由で選定するものとされました。 例えば、〜

    1. 最も不良率の高い不良項目だから、
    2. 上司から求められたから、
    3. 訪問客から見て、一番目立つから、
    というような選定理由の説明が必要なのです。 ここにも間違いがありました。

      QCサークルは日常管理だから、 ほぼ無費用で、 専ら努力・創意工夫で問題を解決しますが、 そういう仕事に理由の説明が必要でしょうか?

      例えば、 家庭の奥さんが庭のアサガオが倒れそうなので支え棒を立てたとき、「その改善テーマを選んだ理由」 の説明を求めますか?

      ヒビが入ったトイレの窓ガラスを新しい窓ガラスに交換したとき、 その理由の説明を求めますか?

      やるのが当然の活動については、 理由の説明が要るとは思えません。 QCサークルのテーマ選定のように、 理由の説明が求められない選定をプレファランス (Preference) と言います。

      他方で、 畳の交換、 屋根の修理、 部屋の増築、 その他、 相当の出費を伴う工事は限られた予算から出費するので、 理由があるものを選定します。 この理由の説明を要する選定をセレクション (Selection) と言います。

      つまり、 方針管理における長期方針や年度方針の決定には理由が要ることが分かります。


      ここで、QCサークルについて、 重要な注意事項があります。 それは、「取り掛かるテーマの選定」 と 「発表テーマの選定」 とは無関係だということです。

      誤った指導では、「取り掛かるテーマ=発表するテーマ」 と教わります。 しかし、 それは大変にムリな話です。

      なぜなら、 もし、 これから取り掛かるテーマを活動が終了した時点で必ず発表するのであれば、 次の条件を満たす必要が出てくるからです。

    1.極めて難しいテーマであること。
      原因不明であり、 1個の対策では解決せず、 数個の対策をさんざん苦労して打って何とか解決するテーマで、費用もほとんどかけないで大きな効果が得られるテーマでなければならない。

    2.極めて優しいテーマであること。
      一方、 必ず目標が達成できるためには、 事前に活動の結果が分かる簡単なテーマで、 計画を立てる都合上、 いつごろ何をするのか事前に分かる簡単なテーマで、 また、メンバーの全員が参加する出来るテーマであることが事前に分かる簡単なテーマでなければならない。

      こういうテーマを選定できる人は、 世界中に一人もいません。

      なのに、 全サークルがこのようなテーマを選で、 活動して、 発表します。 これは極めて不思議な話です。

      ですが、 皆がウソ話を発表していると考えれば、 初めて納得できることです。


    §7 典型QCストーリー

      「穴あけ直角度不良」 と称し、鋼板にボール盤でドリル穴を開けて、 穴の直角度が悪い不良が多発しています。 これに取りかかることにします。

      これは放置できないから取り組むのは当然で、 理由を説明する必要はありません。

      次に、どうやって解決すべきでしょうか?

    1. 問題解決型 (解析的アプローチ)
      最初から直角度が悪かったか、 何か原因があって直角度が悪化したのか〜などを調べて、悪化の原因を究明して対策を打つ。

    2. 課題達成型 (設計的アプローチ)
      原因を問題にしても大きな進展が望めない場合、 新たに穴あけ治具を作るか、設計変更で穴あけを不要にする等の対策を打つ。

    1. 施策実行型 (既知の対策を講じる)
      どんな対策を知っているか?
      以上のように、 既知の対策を実施、 原因を探して除去、 全く新しい穴あけ方法、 穴加工を不要にする設計変更〜等々の分かれ道を判断するためのデータを収集をします。 このような選択は、 1回ではなく常につきまといます。


    §8 典型QCストーリーの注意事項

      選定したテーマがこれら3つのどれかに絞ることができれば、 そのタイプの活動として進めます。 それぞれ、特別なことはありません。

      既知の対策があるなら実施すればよいし、 原因が分かったら除去すればよいし、 全く新しい方法がよければ工夫する〜と言う具合に、 実際の仕事は楽ではないが、 話そのものは簡単です。

      ただ、 注意を要する点は多数あります。 一度に説明すると混乱するので、 徐々に追加します。

    〔注意1〕実務では混合タイプが普通
      タイプを3つ示すと、 実務で現れるテーマも "純粋に" これらの1つに該当すると誤解されがちですが、 そんなことは滅多にありません。 大体が右に示す事例の如き混合型方です。

      この事例は 「安全装置の作動不良」 ですが、 大きく影響している要因は図示の3つです。

    1. ピン穴の直角度: 穴あけ治具を "設計" する。
    2. ピンの腐食: "原因を解明して対策を打つ"。
    3. ソレノイドのパワー不足: 1ランク上を使う。
      よくご理解頂きたいのは、 活動・発表の典型タイプ (典型QCストーリー) をそのまま使うという実務はあまりないということです。

      さらに実務では、 上の3つの他に、 対策先行型事後予防型 などの典型パターンがあり、 それらも極めて多用されます。

    〔注意2〕対策先行型
      現場の状況データ (発生場所、 発生頻度、 時系列グラフ、 設備の状態、 人の状態、 目撃情報など) から怪しい要因を数個列挙し、 そこから真の原因を確定して対策を講じるのが普通の姿です。

      しかし、 実務では、 これらのどれが真の原因か分からないことが多く、その場合は対策を先に打ってしまいます。 これが対策先行型です。

      原因が明確でないのに対策を講ずるやり方が是認される理由は、 どこにありますか?

    1. 対策が安価で、 失敗が許されるから。
    2. 失敗でも、 真の原因の範囲が狭まる。
    3. 失敗でも、 別のトラブルの予防になる。
      対策先行型が禁止されるのは、対策費が高額で失敗が許されない場合です。

      なお、 対策先行型にも、2種類あります。

     1.逐次対策型
     ・要因を思いつきしだい対策を打つ場合です。
     ・そして、 対策と効果を記録し、 その要因が影響すると分かったら特性要因図に記載します。
     ・各要因が独立な場合に有効で、 実施した対策の結果情報を早くつかめて、 進行が早くなります。

     2.溜め込み型
     ・要因を思いつきしだい特性要因図に列挙し、 全要因を列挙し終わったら、 どれについて対策を講じるか検討した上で対策を実施する場合です。
     ・そして、 対策と効果を記録し、 影響しないと分かった要因を特性要因図から削除します。 直交配列表を使った実験で要因の影響力を調べてから対策を講じる場合は、 このタイプの活動になります。


    〔注意3〕事後予防型
      追加パターンの2つ目は、 事後予防型のパターンです。 一見変な名称ですが、 理由があります。 予防は予防ですが、 本番の仕事が始まった後で行う予防なので 「事後」 ですが、 トラブル (不良、 怪我、 有害物質の排出、 納期遅れなど) が起きないうちに対策するから 「予防」 なのです。

      いま、 部品加工の工程でダコンがつく不良が数%発生しているとします。 この際に確認しなければならないことは、

    1. 十分に予防して、それでも発生したのか?
    2. そもそも予防などしていなかったのか?
    〜ということです。

      予防をしたのに不良等が発生したのなら、 原因を探して対策を打つのは当然です。 しかし、 予防をしていないなら、 いきなり原因を追究せず、 まず予防からやり直さねばなりません。

      なぜなら、 予防を後回しにして原因だけに対策を打つと、いわゆるモグラ叩きになるからです。

      つまり、先に 「考えられる全ての要因を特性要因図に列挙して、 その全てに (少費用の範囲で)対策を講じる活動」 = 事後予活動をした上で、 ひとまづ結果を見るステップが必要になります。 ここで使うのが管理用特性要因図です。

      それでダコンが収まれば、 予防が効いたことになります。 当然、 どの予防策が功を奏したか確認した方がいいでしょう。

      反対に、 予防活動でダコン不良が収まらない場合は、 今度は犯人 (原因) 探しのための特性要因図を作成することになります。 ここで使うのが解析用特性要因図です。

      管理用と解析用は、 目的が異なるだけあって、 作り方や利用の仕方が全く違います。

    〔典型QCストーリーのタイプ〕
    活動タイプ サブタイプ備 考
    事後予防型予防状況を調べ、 既知の予防策を補充する。予防策の補充でトラブルが収まったときでも、 さらに原因を追求する。
    施策実行型予防活動は済んでいるが、 その後、 新たに既知の原因が発生して対策を打つ。予防を放置して、 頭中の対策を打つだけでは不可。
    問題解決型予防策を補充しても解決しない場合に、 正体不明の原因にせまる。原因確定型高額な対策は、 原因を明確にしてからでなければ打てない。
    対策先行型逐次対策型要因を見つけ次第対策する。最も迅速に改善が進み、 QCサークルに最適。特性要因図は最後に作る。
    溜め込み型特性要因図に要因を溜め込んでから、 直交配列表や重回帰分析で絞る場合に多い。
    課題達成型従来のやり方を廃止して、 新たなやり方を設計する。その場合も、 当然、 全てのQDCSEのトラブルを予防すること。

      QCサークルで一番多い間違いは、 予防を問題にせず、 いきなり原因を追究して対策を打つやり方です。 これだと、 その原因だけ改善されても、 他の放置された多数の要因が新たな原因となってトラブルを起こします。 これがもぐら叩きです。

      従来の参考書やセミナーで、 この間違った指導が普通に行われてきました。 品質管理の本質は予防であって 「カイゼン」 ではありません。 「カイゼン」 は予防に失敗した後始末です。

      その間違いの第一歩は、 当時の東京大学教授の石川馨氏の提唱の仕方にあります。

      石川氏は、 QCサークルを発案した功労者ですが、「QCサークルの自主性」 を肯定するという矛盾を抱え、 その後の発展を大きく阻害したことは前述しました。

      石川氏は、 特性要因図を最初に提唱した功労者でもありますが、 原因追求の目的で管理用-特性要因図を提唱したのです。 正しくは、
    1. 原因探求目的なら、解析用-特性要因図
    2. 予防目的なら、管理用-特性要因図
    を作成するものと提唱すべきだったのです。

      それを是正する学者も現れないまま全員が 「右へならえ」 をし、 以来、 管理用とも解析用ともつかない不思議な特性要因図が1種類しかなく、 予防活動が置き去りにされたのです。

      予防の観念がないから、 「1度の失敗は仕方がない。 同じ失敗は繰り返えすな」 という考え方になり、 「別の失敗なら繰り返しも仕方がない → もぐら叩き体質」 の原動力になったのです。


    〔参考〕
      「事後予防型とは何だ? 予防は事前に決まっているじゃないか?」 と考える方がいるかも知れません。 なので、ちょこっと説明を追加しましょう。

      製品設計にせよ工程設計にせよ、 およそシステム設計は、

    1. 機能設計 --- ちゃんと機能するように設計する。
    2. 信頼性設計 --- 壊れないように設計する。
    から成り立っています。

     機能設計では、 製品がちゃんと機能するように、 逆に言えば「機能しない」ことを予防します。

      信頼性設計では、 少しぐらいのことでは壊れないように予防します。

      これらは全て、 製品や工程が実現する前の設計段階で予防するので、 事前予防です。

      しかし、 そうやって実際に製品を生産・販売し始めたり、 工程を稼動し始めたりした後でも、 「ん? この点も対策を講じておく必要がありそうだ。」 と気がついたら、 対策を補充することが非常に重要になります。

      既に実現してから補充するから 「事後」 の対策ですが、 トラブルが起きる前の対策だから 「予防」 です。 だから、「事後予防」 というわけですよ。

      なになに? トラブルが起きた後なのに 「予防」 と呼ぶのはなぜかって?

      原因かどうかを問わずに、「全ての要因に対して」 対策を講ずるからですよ。 これは予防活動の特徴です。


    〔注意4〕実務の活動と発表
      これまで述べた活動手順は、典型活動パターン、または典型QCストーリーといいます。

      なぜ、 「典型」 などという余計なものがつくか。 純粋にそのトラブルを改善する目的で、 何事もなく進めば、 通常そのような経過を辿って活動が進むはずだ、 という机上のパターンを示します。

      しかし、実務では、 右に列挙したように、 ケースバイケースの変化があります。

    〜という訳で、 実務QCストーリーは個々の活動ごとに自分で作り上げていくことになります。 その際に、 典型QCストーリーを参考にして頂けばよいということです。

      同じことは発表についてもいえます。 典型QCストーリーには、 「原則、こういう手順で活動し発表せよ」 などという役目はありません。

    〔実務におけるバリエーション〕
    1. 実際には、 いろいろな活動パターンが混ざり、 純粋という訳に行きません。
    2. 問題解決型で、 いくつかの要因は逐次対策型でやり、 他の要因は溜め込み型にすることもあります。
    3. 当該テーマの原因とは関係のない予防策を追加することもあります。
    4. 特性要因図を先に作ることもあれば、 最後に要因をまとめて作る場合もあります。
    5. 反省事項があるかもしれないし、ないかもしれません。仮にあっても、 発表はしません。
    6. 場合によっては、 現状のデータをとらないで解決することもあり得ます。
      例えば、 次の表に示すような活動・発表の手順が考えられます。 しかし、これは、無数にあり得る手順の1例であって、 模倣してはなりません。


    §9 活動・発表手順の具体例

      皆さんの中には、碁、将棋、マージャンなどのゲームを趣味にされている方も多いと思いますが、 これ一本で行けば勝つ 「将棋の勝ち方」 というような指し方が存在しないことはご承知でしょう。

      定石はあります。 また、 定石を研究して個々の勝負に応用してこそ、 強くなって生きます。 しかし、 相手のあることですから、 定石をその通りやろうとしても出来ません。

      典型QCストーリーは、 将棋の定石に該当します。 改善にも 「問題を起こしているシステム」 という相手があり、 こちらの思う通りにはなりません。

      個々のテーマについては、 最も合った活動手順を自分たちで模索して進めなければならず、 また個々の発表も、 活動の価値が最も理解されやすい発表の仕方を模索せねばなりません。


    〔実務上の発表・活動手順〕
    活動・発表事項説 明備 考
    日程計画メンバー間の連携を図るため、頻繁に短期(例えば週間)予定表を作成する。しかし発表しないこと。全体を通じた大まかな活動実績は最後のまとめで発表してよい。
    テーマ選定活動テーマ:やりやすいもの、緊急なものなどを選ぶ。重点管理の適用はない。
    発表テーマ:過去の活動から、「発表に値するテーマ」を選ぶ。失敗事例でもよい。
    テーマ選定理由活動テーマ:理由を示す必要はない。=プレファランス
    発表テーマ:どの点に発表価値があるかを説明する。取り組んだ理由ではない。
    ニーズ時代や環境からのニーズ
    上からのノルマ
    自身の願望〜などを明示する。
    特性値は数値を示すが、他は必ずしもその必要はない。
    予防の補充トラブルの内容から、予防状況を調査し、補充すべき全ての要因と対策を明確にして補充する。ただし、出費の大きい対策は、方針管理のテーマに移す。管理用特性要因図
    補充の効果を確認し、トラブルが解消しなければ以降の原因追及に移行する。予防と原因追求の両方を同時進行してもよい。
    原因の追究現場のデータを収集し、関連しそうな要因を解析用特性要因図に列挙し、影響力を判定する。逐次対策法の場合は、あとで特性要因図を作成。
    対策の立案原因、または原因らしき要因に対する対策を立案する。解析的アプローチ(問題解決型)
    原因を問わないで新たな手段・方法を設計するのが有利な場合がある。設計的アプローチ(課題達成型)
    効果の確認満足度(ニーズの充足度)を示す。目標達成率ではない。
    標準化改善点を図面・QC工程表などに掲載し、遵守漏れを防ぐ方法も工夫する。図面・QC工程表も標準書・指示書
    まとめ活動全体の日程実績の説明
    発表のポイントを分かりやすくまとめる。
    活動の反省や今後の計画などは発表しない。

      次に簡単な事例を紹介します。
  • テーマ ─ 金型課の金型設計技術者が「雑用で中断されることが多く、仕事に集中できない」という問題に、職場全体で取り組むことにした。
  • 発表理由 ─ 「今日できることは今日行え」という教訓が役立った事例である。
  • 要因分析・対策・標準化 ─ どのような雑用があるのか表に整理することになった。 しかし、 いざとなると内容が様々で、 なかなか思い出せない。
     そこで、 雑用が生じる都度、 内容と費やした時間を記録し、 是正策と予防策を講じ、 特性要因図に要因を整理して、 標準化することになった。
     一度対策を打ったのと同じ雑用が生じたときは、 さらに対策を追加し、 これを繰り返した(PDCA)。
  • 効果 ─ 次のグラフにように、 雑用による中断時間が減少した。
  • 〔注〕 雑用時間が1日あたり5分(=週当たり25分)ほどなら許容できるとして、
    満足度許容時間 / 改善後の雑用時間
     25×100 / 5 = 500〔%〕
     また、 PDCAだから目標は設定しない。




    §10 特性要因図

      特性要因図は、 次のように、 一般に誤って指導されています。
    1. 管理用と解析用の区別がない。
    2. 要因と原因の区別が不明。
    3. ブレーンストーミングや 「なぜなぜ分析」 を使って作成する。
    4. 特性を70個以上列挙せよ、 と指導する。
    5. 重要な要因3つに丸をつけよ、 と指導する。
      このような指導があったら、 それは疑うに十分な兆候です。

      以下、 管理用、 解析用、 および誤った指導例を表に整理して示します。   

    〔参考〕
     ・特性要因図とは、 特性と要因の関係を系統的に表した図表をいう。 線で表しても表であらわしもよい。
     ・特性とは、 管理の対象となる成績をいう。
     ・要因とは、 特性に影響する条件をいう。
     ・原因とは、 管理が不適切なため、 トラブルを導いた要因をいう。 要因は管理が適切であれば原因にならないが、 放置すれば原因になってトラブルを引き起こす。
     ・ブレーンストーミング(BS)とは、 万策尽きて最後の手段として奇想天外なアイデアを得るための手法で、 何の制限・批判も受けない保証のもとに自由に発案する発想法である。 砂浜からダイヤモンド粒を探すようなやり方であって、 特性要因図の作成に適しない。
     ・なぜなぜ分析とは、 原因が判明したときに、 そこから根本原因にたどり着く手法で、「なぜ?」 を繰り返す。 「トラブルが、 なぜ起きたか?」 と尋ねても原因は出てこないが、 原因が分かれば、 その根本原因は追跡することが出来る。


    〔特性要因図の目的別の種類〕
    比較事項 管理用 解析用 誤った指導例
    作成目的 管理すべき全要因の列挙 原因の追求 原因の追求
    要因の根拠 その分野の知識・経験 現場データ その分野の知識・経験
    アプローチ 頭の中から データから 頭の中から
    (なぜなぜ、BSなど)
    要因の数 多数、さらに検討で追加 少数、さらに検討で削減 非常に多数急激に絞る
    対策の対象 全要因 重要な要因(要因層別などで) 3つの要因(多くは、カンで)
    活動の型 事後予防型 問題解決型 全ての場合にこれで通す。


      上の比較表では、 管理用は赤文字で、 解析用は青文字で示してあり、 相互に全く相容れない性格になっています。

      しかし誤った指導例では、 相容れない赤と青とが入り混じり、 矛盾が明白です。 非常に多数の要因を列挙するため、 原因は究明できません。

      そして、 わずか3個に対策を打つだけなので、 予防として不完全で、 もぐら叩きに陥ります。 その結果、 体裁目的の特性要因図で終始し、 飾り以外に何の役にも立たない事例が多く見られます。

      管理用と解析用は、常に意識して区別しなければなりません。



    §11 発表と審査

      「今年の秋の大会で発表するテーマを選定するのに苦労している」 という話をよく耳にします。

      そこで、その意味を吟味してみると、

    • 今年の秋に、 QCサークル活動の発表大会が開催される。
    • 全サークルが発表しなければならない。
    • 発表テーマは、 過去の事例ではなく、 4月に選定して9月中に終了し、 10月に発表資料を事務局に提出し、 11月に発表する。
    • 発表は社内外の審査員団が審査し、 金賞・銀賞・銅賞〜などと賞金が与えられる。
    • その成果は、 サークルメンバーの給与査定の際に参照される。
    〜ということになっているらしい。
      誤った指導を受けた結果、 何ともお気の毒なことになっているのです。

      何の目的で発表するのですか? 審査をして優良な活動をしたサークルを表彰し、 よって 「やる気」を起こさせる?

      ところで、 誰が審査するのですか? 審査員は、 これまでに説明した初歩知識を持ち、 かつ十分に経験した人達ですか? それとも、 目標の意味も分からず、 典型QCストーリーは知らず、 特性要因図の知識もない人達ですか?

      そのような矛盾した審査は、 即刻、 廃止すべきです。 発表は、 自己研鑽と相互啓蒙の目的で行ってください。


      すなわち、 過去の完了テーマから発表に値する (参考になる) テーマを選定すること。 発表に値するテーマがなかったら、 発表してはなりません。 失敗事例でも、 自己又は他人の参考になるものなら一向に支障ありません。

      参考になったかどうかを評価するのですから、 サークル同士の互選にしましょう。

      すると議論が活発になります。 ウソ発表は、 即座にバレてしまいます。

      また、 新しい手法や考え方の紹介、 意見交換なども活発になります。

      偉い人を連れてきて審査員にして体裁をつくろうのは、 絶対にやめましょう。



    §12 誤った指導例、および正しい指導例

      Yahoo! 知恵袋という質問・回答の制度があり、 ここにQCサークル活動についての質問と、それに対するベストアンサーが紹介されていた(参照)。

      その内容を講評してみよう。 結論として、 ベストアンサーなるものは誤っており、 このような指導が行われるケースが跡を絶たない実態が見えてくる。

      ベストアンサーかどうかは質問者が決めるらしいが、 ベストと判断する能力があるなら質問の必要もなったはずである。

      しかも、 それが誤りであることを指摘しようとしても回答期間が締め切られ、 是正の機会もないのである。


    ファイルが乱雑に置かれた共有フォルダの整理

      QCサークル活動につき、このテーマに取り組もうと思いますが、皆さまのご意見をください。

      ★共有フォルダが整理されていないので、見つけたいファイルがすぐに見つからず業務上非効率である。上記について取り組もうとした場合の下記のQC活動のポイントについて意見していただけたら幸いです。

    • 型:問題解決型
    • テーマ:必要なファイルの検索時間短縮
    • あるべき姿:共有フォルダが整理されている。 業務上必要なファイルがすぐに見つかる。 階層が浅い。
    • 現状:共有フォルダが整理されていない。 必要なファイルがすぐに見つからない。 階層が深い。
    • 問題:上記のあるべき姿と現状の差異
    • 真因:ルールがない。
    • 課題:ルールを作ろう。
    • 目標:ルール作成:ルールが作成された効果測定として、ファイルの検索時間:例:現状1分→30秒
    • 対策:ルール作成:思案中。
    • 効果測定:ファイルが30秒以内に検索できるようになった。ゆえに、作成したルールが効果的であるといえる。
    • 標準化:ルールの周知徹底。

      これが質問で、 これに対する Yahoo! 知恵袋の 「ベストアンサー」 は、 下表の左欄のように指導的な意見を述べています。
      これを右欄で各項目ごとに講評し、 その上で、 別の表に正しい指導例をまとめておきます。
     Yahoo! 知恵袋の「ベストアンサー」講 評
  • 「問題」まではOK。  〔注〕「すなわち、次がOK。
     *型:問題解決型
     *テーマ:必要なファイルの検索時間短縮
     *あるべき姿:共有フォルダが整理され、業務上必要なファイルがすぐに見つかる。 階層が浅い。
     *現状:共有フォルダが整理されていない。 必要なファイルがすぐに見つからない。 階層が深い。
     *問題:上記のあるべき姿と現状の差異
  •  「あるべき姿」は、 問題を解決して、 最終的に 「これでよし」 となるまで分からない。「あるべき姿」 が分かったらそれを標準化するのだから、 「問題:あるべき姿と現状の差異」 という関係は成り立たない。
  • でも、 既に 「ルールがない」 という真因を見つけて対策のねらい所が見えており、 その対策を考え実行するのだから、「施策実行型」 とするのが良いでしょう。
  •  「ルールがない」 のは真因ではない。「共有フォルダが整理されていない」 などが真因であり、その対策のめどは立っていないので、「施策実行型」ではあり得ない。
  • 「要因の解析」を省略し、「対策のねらい所」のステップを設け、「ルールを作ろう」ということで対策を考え実行する活動を進めればよい。 但し、 あくまで「ルールがない」ことだけが検索時間の要因として間違いない場合です。 他にもありそうなら、「要因解析」をして「問題解決型」にする。 管理特性は「検索時間」とするのが無難です。
  •  対策をルール化するのであって、 ルール化が対策なのではない (主客転倒)。 ここで 「ルールがない」とは、 要するに 「検索に手間取らない予防策」 を盛り込んだファイリング・システム(管理手順)がないことを意味する。 ファイリング・システムの設計から始めるから、「課題達成型」になる。
  • 「現状把握」で「検索時間」を取る。 共用フォルダは利用するから複数の人のデータが必要です。
  •  検索時間のデータをとる必要はない。 なぜなら、 現状の検索時間がどうであろうが、 欲しいファイリング・システムは変わらないからである。 左の指導例は、 検索時間のデータから何を得たいのか不明。
  • 「目標設定」は、「検索時間をいつまでに、○○秒にする」 と具体的にし、根拠も示すこと。 仮に現状の半分にするのなら、 なぜ半分かという理由は必要です。
  •  ここで決めるのは目標ではなく「○○秒にしたい」 という願望である。 願望に根拠があるとは限らず、 ない場合は示す必要はない。 設計したファイリング・システムを実施して、 検索時間のデータをとり、 願望が満たせば満足度100%だし、検索時間が2倍なら50%である。 つまり目標達成率ではなく、 願望が満たされた程度としての満足度で評価することになる。
  • 「標準化」とは、 文書(マニュアル)にすべきです。 このルールが守られているかの管理も必要です。
  •  これは、妥当な指導である。 すなわち、 対策を維持するためにルールを作成するから、 ルールと対策とは別物であることが分かる。
  • 「標準化と管理の定着」で、「ルールを作る」が一次対策で、 それを具体化するが、 周知徹底も対策の一部です。 どういう方法・手順で確実に周知し徹底するか、具体策も必要です。教育も対策になる。 なので標準化では、マニュアルを作って、 皆がきちんと使えるように教育した記録を残すことが管理になります。
  •  「ルールがない」 ことは原因ではなく、「ルールを作る」 ことも対策ではない。 もしそれが原因なら、 中身(対策)を問わずにルールさえ定めればよいことになるが、 それで解決するはずがないから 「ルールを作る」 こと自体は対策にはならない。
     対策が分かったら、 それをルール化するのである。 ルール遵守に関する指導はこれでよい。

    正しい指導例
  • 「現状把握」で、 まず、「予防の状況」をつかむ。 ファイリング・システムがないという現状把握は既に済んでいる(質問で 「ルールがない」 と述べているのは、 この意味)。 故に、ファイリング・システムを設計して、 効果を確認する活動になる。

  • このように設計的に解決する活動を「課題達成型」という。「何型の活動」 になるかは、 活動しながら次第に決まっていくことになる。

  • ファイリング・システムがないことは把握できても、 それだけでは具体的な 「対策のめど」 は立っておらず、 「施策実行型」にはならない。 なぜなら、 実行しようにも、実行可能な程度の具体性と一定の効果を伴う施策がまだないからである。
  • どのくらいの検索時間でありたいか、 自分達の願望を確認する。 願望は感覚だから、 理由は不要。 また、 QCサークルはフィードバック管理だから、 目標設定も不要。

  • 「要因分析」では、 検索時間に影響しそうな全ての要因を管理用-特性要因図 (表の方がよい) に列挙し、それぞれの要因に対する対策とか注意事項などを予め検討しておく。

  • ファイリング・システム案がいくつか出たら、 最もよさそうなものを選んで(1個しかなければ、 それを)試行して改良を重ね、改良ごとに検索時間の変化が分かるように時系列グラフに表わす。  

  • 改善の余地がなくなった時点で、効果を確認し、そのファイリング・システムを文書化する。 できれば、違反が直ぐ分かる仕組みにする。

  • 「効果の確認」は、そのシステムにおける平均検索時間を指す。願望と平均検索時間との差は、これで十分かどうか(満足度)を表すことになる。

  • 「標準化」は、 そのシステムの構成、 メンテなどを書面にルール化する。
    〔注意〕対策の内容をルール化するのであって、 「ルールがないことが原因」ではないし、「対策としてルールを作る」のでもない。 これは初心者が間違いやすい代表的な事項である。
  • 「あるべき姿」が何であるかは、 活動が終わって初めて判明するわけで、その「あるべき姿」を標準化することになる。「あるべき姿」は、 事前には分からない。 故に、「問題=あるべき姿と現状の差異」という考え方は成り立たない。

  • システムの故障モード(破壊、又は、不遵守)を列挙して、 起きたときの深刻さ、 頻度、 前兆の検知度などを評価してFMEAを行えば、なお結構。

     大まかに、 以上のような指導が適切だと思われますが、 具体的な詳細がつかめないので、 実際には少し違った活動になることもあり得ます。



  • §13 あとがき

      一時の隆盛を誇ったQCサークルは、 30年ほど前から徐々に衰退を続け、 現在は20%程にまでに減りました。

      しかし、ISO 9000−2000で継続的改善が義務付けられたことで、 再びQCサークルを導入する企業が増加しつつあります。

      この機に乗じ、「待ってました!」 とばかりに、 かつてQCサークルをダメにした人達が喜んで腰を上げています。 

      そして、 相変わらずの精神主義・体裁主義の古典理論を振りまきます。

      すなわち、 「あるべき姿」 を目標に設定し、 QCストーリー通りに活動し発表し、 お偉方が審査する〜というやり方です。

      これを何とか阻止して、 正しい活動を普及するのが筆者の願いであります。 このページによって、 その方向への幾分かの進展があれば幸甚です。

    〔おわり〕
    客観説─QC
    客観説─品質管理
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    seminar1
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    seminar4
    FMEA/FTA・特性要因図 ─ 研修セミナー
    時事評論コラム なるほどダイエット
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