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10 客観説TQMの導入
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第4章 是正したQCストーリー

  問題解決型QCストーリーを是正します。 重要なのは、 出費の多い活動 (大改善) と少ない活動 (小改善) とで手順が全く異なるという点です。 そしてこの章では大改善だけを扱い、 小改善は第7章に譲ります。
  字数の制限から、 目標の設定、 テーマの選定、 原因の推定の3つは、 それぞれの章で詳しく述べます。

賛同意見   学会発表(目標)   学会発表(QCストーリー)   学会発表(方針管理)   学会発表(小集団活動)   QCサークル:やさしい入門編   全10章プリント冊子の販売


 4−1 是正したQCストーリーの概要 

  我々が 「QCストーリー」 と言う場合、 2通りの意味がある。

(1)典型QCストーリー
  典型的な活動バターンの 「典型的な発表の筋書き」 のことである。 つまり、 次のような典型発表パターンである。

  1. 業務開始後に行う 事後的予防型
  2. 原因を解析して除去する 問題解決型
  3. 原因は確定しないが有力な要因の全てに対策を講じる 対策先行型
  1. 原因を問題にせずに設計的にアプローチする 課題達成型
  2. 原因や対策が分かっている場合の 施策実行型
  典型QCストーリーは定石であって、 実務でその通りに活動したり発表することはほとんどない。

(2)実際のQCストーリー
  実際の活動を実際に発表する場合の 「発表の筋書き」 である。 これは発表者が典型QCストーリーを参考に、 実際の発表に適するように(発表のポイントが分かるように)作るものである。


  以下、 典型QCストーリーについて考察して行こう。

  次の表は小改善と大改善とで、 活動 (発表) の内容 (手順) がどう違うか、  問題解決型の活動で対比させたものである。 課題達成型と施策実行型はこれに準じればよく、 後で述べる。

  この表から理解して貰いたいのは、 活動テーマの選定、 重点管理、 目標の設定、 大日程計画、 達成率計算などのステップは大改善のためのステップであって、 小集団活動などの小改善には適用されないことである。

  小改善は、 「原因が確定してから対策を考える」 という原則に従わず、 原因不明の状態で怪しい要因に対策を講ずることが可能だという点で大改善と大きな違いがある。

  さらに、 管理サイクルは出費の少ない小改善を中心に考え得るものであって、 大金を出費する大改善では頻繁な適用は難しい。

  以上のように、 大改善と小改善に分けて考察することが品質管理を理解し論ずる上で欠かせないものであることを時間をかけてじっくりと理解して欲しい。



[図表4a-1]大改善と小改善の比較
比較事項大改善(出費大)小改善(出費少)
テーマの選定多額の出費を伴う改善は、重点管理、経営方針、戦略など、特別の理由が要る。 故に、テーマ選定理由とは活動テーマに選んだ理由である。 問題があれば何にでも手を出すから、活動テーマは選ばない(任意に採用する)。 重点管理などの適用はなく、 テーマ選定理由とは発表テーマに選んだ理由である。
活動計画 活動手順のタイプは、 問題解決型、 課題達成型、 施策実行型の3種類。さらに、対策先行型と事後予防型が加わって5種類になる。
活動期限がある場合
 → 大日程計画+小日程計画
終わりなき日常管理だから、 通常は活動期限や大日程計画はない。
活動期限がない場合 → 手順計画+小日程計画
要因の検証多額の出費を要するから、 原因を確定した上で対策を立案する(原因確定型)。 出費が少ないから、 原因を絞れないときは、 怪しい要因の全てに対策を講ずる(対策先行型、 事後予防型)。
対策の立案/選定 やり直しがきかないから、 網羅的に立案して最善策を選ぶ。 やり直しがきくから最善である必要はなく、 対策を思いつきしだい、 良い案が出たら出たときに実施する。
目標の設定 大金を投ずるから、 最善の見返りを保証するために目標を設定し、 達成率を問題とする。 設定された目標がニーズを満たさないときは、 経営者が反省する。 最善性も見返りの保証も不要なため、 目標を設定しない。
管理サイクル 大金を出費する改善のやり直しはできないから、 石橋を叩いて1回だけ最善を尽くすが、 管理サイクルを回さない傾向となる。 簡素な手順で頻繁に管理サイクルを回す。 いわば、 石橋を叩かないで何度でもやり直しをする活動である。


  この違いを問題解決型のQCストーリーに反映すると、図表4a-2 のようになる。

  太字で示した部分は大改善にはない小改善の特徴である。

  この太字の部分を考慮すると、 小改善は 「簡素な手順であり、 その埋め合わせを頻繁に管理サイクルを回すことによって行う」 活動であるという本質が浮かび上がる。

[図表4a−2] 是正した問題解決型QCストーリー 赤字は改訂箇所 → 解説 7-2-2(6)■2
ステップ 大改善(4-2) 小改善(4-3)
テーマの把握 ・テーマの名称
・トラブルの内容
予防の状況(管理用特性要因図)
・特性の現状値
・取り組んだ理由
・テーマの名称
・トラブルの内容
予防の状況(管理用特性要因図)
・特性の現状値
発表する理由、見せ所(強要せず)
活動の計画 ・小日程計画
・手順計画(期限なし)
・大日程計画(期限あり)
・小日程計画
・手順計画(期限なし)
大日程計画なし。実績記録のみ。
原因の推定 ・攻めどころを絞る。(現状把握)
・その範囲で要因を列挙(解析用特性要因図
・データで要因を絞り、原因を確定。
・攻めどころを絞る。(現状把握)
・その範囲で要因を列挙(解析用特性要因図)
・データで要因を絞って原因を確定する場合もあるが、全要因に対策を講ずることもある(対策先行型、事後予防型)。
対策の立案 ・定性的・網羅的に立案 思いつきしだい立案
対策の選定 ・データ化+トレードオフ
   → 最善策の選定
良さそうな対策を実施し、
  → ダメなら別の対策を実施。
目標の設定 ・選定した対策の全入力と全出力が目標
・低い目標には経営者が反省
目標の設定なし。
対策の実施 ・目標の妥当性を審査して許可
・実施計画の作成
・対策別の効果が分かるように実施
・副作用(出費、騒音、安全等)に留意
目標の審査なし。
・実施計画の作成
・対策別の効果が分かるように実施
・副作用(出費、騒音、安全等)に留意
結果の確認 ・対策別の結果と総合結果・対策別の結果と総合結果
・目標項目ごとに達成率を計算 達成率の計算なし。
歯止め ・実施の確保・標準化・実施の確保・標準化
担当者の反省 ・達成率を反省 達成率の反省なし。

  以下、 この章では大改善を中心に解説し、 小改善は第7章に譲る。 双方ともに、 上の違いがどのような理由によるものかを意識して理解する必要がある。


 4−2 大改善のステップ 
  本章で各ステップを一通り簡潔に説明するので、 図表集をクリックして 図表4a−2 を常に参照できるようにして頂きたい。

  4-2-1 テーマの把握
  トラブルの内容、 特性の現状値(悪さ加減)、及び、取り組みの理由を明確にする。 テーマの名称は、 発表までに決めればよい。

  日常管理の小改善は特別の理由で活動する訳ではないから、 「選定の理由」 とは、 発表テーマとして選んだ理由 (見どころ、見せ場) である。

  しかし、 大改善は多額の出費を伴うから、 特別な理由がなければ活動テーマに選定することはできない。

  故に、 大改善の場合の「テーマ選定理由」は、 取組んだ理由である。

  大改善のテーマ選定理由としては、次のようなものが典型的である。
  1. 他のテーマでなく、このテーマに取り組むことにした理由──例えば、 重点管理や方針管理の一環として取り組むことが多い(5-2 新たな重点管理)。
  2. このテーマに取り組む狙い──例えば、 「無人化の準備として行う」 など。
  第5章で述べる「新しい重点管理」 による場合は、 上掲の 図表4a−2 ではなく、 図表5b のようになるが、 各ステップの内容に変化はない。


  4-2-2 活動計画
  多くの指導書では 「テーマを決め、 現状を把握したら目標を設定し、活動計画を作成する」 との趣旨で活動計画が要請される。

  だが、 今後どのような要因が出てくるか、 対策は小改善で済むか、 どの程度の期間を要するか、 普通は事前に知り得ない。 つまり、 予言力がない限り実施事項も方法も期間も知りえないのが普通である。

  従って活動計画をここで扱うのは、 「テーマを決めて現状を把握したら直ちに活動計画に移れ」 との趣旨ではない。 「いずれ実施事項が決まったら手順計画とし、 いずれ日程が決まったら日程計画にせよ」 というだけである。

  換言すれば、 『計画が決まったら、 そのときに、 それを計画書に示せ』 というだけである。

方針決定その後
対策が分かったから実施しよう(施策実行型)ばらばらのテーマ→ 諸件数の推移をグラフ化
同じ特性に関する複数テーマ→ 特性の改善推移をグラフ化
原因が分からない。追求しよう(問題解決型)データから、怪しい要因が複数あるらしい。出費大原因確定
出費少対策先行
予防が不完全だから、先に予防活動をしよう。(事後予防型)管理用特性要因図
→ 問題解決型に移行
原因を問題にしても仕方ないから、新たに設計しよう(課題達成)出費大最善
出費少試行錯誤
この表の解説

  まず現状の状況から、 そのテーマはどう進めて行くかという方針を決めたいところである(上の表を参照)。 そこで、 活動タイプを選定するための 「方針の決定」 という活動ステップを設けてよいか?

  ところが、 そういう手順を設けても、 「そのステップが終わらないと次に進めない。」 という意味の取り扱いができないのである。  なぜかというと、 テーマのことがよく分かっていないこの段階で、 「これ」 とは決めかねることが大半だからである。

  まず、 少なくもトラブルの原因が分からないとする。 しかし、 それだけでは 「施策実行型ではない」 といえるだけであり、 積極的にどのタイプの活動か、 決めかねる。

  そこで、 要因分析に着手し、 その途中で 「課題達成型に切り替えようか?」、 「予防を先にやろうか、 後にしようか?」 と迷う。

  さらに、 「原因を確定しようか、 対策先行で行こうか?」 などといろいろ迷った挙句、 どれかに落ち着いたりするのみならず、 原因確定型と事後予防型を混ぜて、 両方を行ったりすることになる。

  率直にいえば、 原因追求と設計的アプローチの両方を頭に入れておいて、 設計的な改善が安く出来るようであれば課題達成型に切り替えるし、 それがないうちは要因分析にこだわる、 という具合である。

  それから怪しい要因が1個見つかったらすぐに対策を考え、 よい手があればすぐやってしまうのが普通は早いのである。

  建前としては、 要因を多数列挙して、 そのうちの何個かに目をつけて対策を打つのがよい場合もあるが、 1つずつ効果の確認まで進めてしまうこともある。 それで解決すれば、 通常はそれ以上やらなくて済むからである。


 (1) 小日程計画
  小日程計画は、 見通しが立っているここ数日の日程を計画し(P)、 実施して(D)、 結果を見て(C)、 検討し(A)、 再計画する(P)という小さな管理サイクルを回しながら手順を進めるやり方である。

  ただ、 小日程計画書を書面で作成するかどうかは、 あくまでニーズ次第である。 小日程計画は、 当該テーマに関係のない仕事も混入するし担当者しか理解できない細部を含むから、 通常は発表に適しない。

[図表4b] 活動計画と実績
活動項目4月5月6月7月8月
原因の確定




対策の立案




対策の選定




目標の設定




対策の実施




(以下、省略)




(注)9月中旬トップ診断。
   最終期限=8/末

(大日程計画と実績記録)

 (2) 大日程計画
  大日程計画は、 活動に期限がある場合に作る。 まず、 最終期限の理由を明らかにする。  次に、 期限に間に合わせるように手順と日程を入れる( 図表4b )。

  よくあるのは、 「テーマを決めて目標を決めて現状を把握して、さぁ活動計画だ」というQCストーリーだ。 期限はあるのか、 大改善か小改善か、 問題解決型か課題達成型か、 さっぱり分らないうちに計画だけは不思議に立ってしまうのである。

  また、 見通しのきかない先々までの日程を立てることは多くの場合ムダであり、 その部分は実施事項や日程を入れなくてよい。

  原因の解析、 対策の立案のように事前に具体的に決まらない活動は、空白のままにする。 このような考え方を ウエーブ・コンセプト という。

  この考え方では詳細に日程が立つところと空白のところがあり、 あたかも波のようだからそう呼ぶらしい。また、 活動期限がなければ、 他の仕事との調整を図りつつ、 手順計画と小日程計画で管理することになる。

 (3) 小集団活動
  小集団活動の指導書などに、『5W1Hで計画を立てよ。』 と書いてあることが多い。 これは決まらない事項を決めよ、 と言っているのではなく、 決まった範囲で 5W1H が分るように示せという意味である。 小集団活動は期限のない日常管理であって大日程計画を立てる必要性に乏しく、 小日程計画のみとするのが普通である。

 (4) 大日程実績表
  大改善も小改善も、 発表に際して 図表4b と同様の実績表が理解しやすい。 その場合は、 これは活動のための計画ではなく、 発表目的の資料である。


 (5) 小日程計画の役目
  ここで小日程計画と大日程計画(または、手順計画)との関係について考えよう。

  小日程計画は、 いわば目先の数日の日程である。 なぜ、 こんなものを計画するのか?

  進めてみなければどうなるか分らず、 先々まで細かく日程を決められないから、 チョビチョビやるためである。 そう、 これはPDCA 管理サイクルを小さく回しながら進もうということだよ。

  小日程計画を組み(P)、 チョットやってみて(D)、 結果をみて(C)、 その上で次の手を考え(A)、 その先の小日程を組む(P)。

  大日程計画というのは、 手順を示した上で、 「この日程でやって欲しい」 というだけで、 出来るかどうかは分らない性格のものだ (予言力があるなら話は別だが)。

  だから、 期限なし手順計画も期限あり大日程計画も、 小日程計画で繰り返して探りながら進め、 頻繁に計画変更があるのが普通である。


 @(^-^)@ ウェーブ・コンセプト

 プロジェクトには、 内容がお決まりの 定型プロジェクト と、 先行きどうなるか進めてみなければ分からない 非定型プロジェクト がある。

  以前は両方とも最初から最後まで計画を立てたが、 次第にそのムダが分かってきた。

  最近の非定型プロジェクトでは、 分かっているところは詳細に、 よく分からないところは大雑把に、 極端な場合は空欄になる。

  このムラのある計画を 「波のように」 との意味で、 ウェーブ・コンセプト (Wave concept) という。  例えば、 活動タイプの混合を読めば分るように、 どのような手順になるか、 意外に先々まで定まらないものである。

  従って、 どの方向に手順を進めるか、 小日程計画で小さな管理サイクルを回しながら探って行くワケである。


  4-2-3 要因の分析
 (1) 2つのアプローチ
  要因分析における要因列挙の仕方には、 2つの方法がある。 1つは、 経験や知識などから演繹的に要因を判断して列挙する場合であって、 予防目的の 管理用の特性要因図 を作成する。

  この管理用の特性要因図は、 「心配ごと」 を漏れなく列挙して、 その全部に対策を打つことが前提になっている。 QC工程表を作成するときに作るのがこの特性要因図であり、 要因を絞らない。

  2つ目は、 業務の実績データ(状況)をヒントにして、 ここから帰納的に要因を割り出すための 解析用の特性要因図 を作成する場合である。

 (2) 現状把握
  正式業務の開始前にQC工程表を作るために管理用の特性要因図を作成する場合は、 もっぱら知識・経験から要因を判断して対策を講ずるから、 現状把握というステップがない。

  しかし、 事後的に対策を講ずる場合は、 実績データから対策を打つべき範囲を絞る。

  例えば、 工程のこのステップに原因があるとか、 このステップを自動化しようとか、 範囲を絞る。 そのためのデータ収集が現状把握である。  ここで充分に範囲を絞らないと特性要因図に多数の要因 (容疑者) を並べてしまって頓挫する。

  このように現状の把握は重要な活動であるため、 従来、 要因分析の前に独立の手順をなしていた。 だが学説によっては目標設定のための悪さ加減の把握が 「現状の把握」 の中心であるとされ、 手順の目的・内容が不明確だった。

  そこで、 客観説では、 このステップを独立のステップから外して要因分析の一部とした。

 (3) 要因の絞り
    一旦、特性要因図に列挙した要因を 「重要でない」 として削除し、 主要因だけを残すことを 要因の絞り という。


  1. 原因確定型では、 徹底的に要因を絞る。 対策に大金を要するから、 原因が明確にならなければ対策を検討しない。

  2. 対策先行型では、 原因を明確に特定できなくても、 数個の疑わしい要因に小改善を実行する。 原因を明確にするよりも対策を打つ方が費用が少ないからだ。

  3. 事後予防型ではほとんど絞らない。 予め予防策を講じていないから心配ごとが多く、 従って現在起きている原因に対策を講じても、 他の要因がいつ新たな原因になるとも限らない。

  改善実例として公開されている トヨタ部品愛知共販梶@殿の事例 では管理用の特性要因図が作成されている。

  従って絞ってはならず、 そこに列挙した全要因に対策を講ずべき場合である (一部にしか対策を講じなかった理由は示されていない)。

  4. 施策実行型は大改善と小改善で異なる。 大改善では最善性を要求されるため、 原因・対策が見えていてもその証明をしなければならない。 従って、 本来の問題解決型や課題達成型と区別がつかない。 強いて言えば、 原因・対策が見えているだけ楽な問題解決型、 楽な課題達成型であるといえる。

  小改善では最善性を要求されないから、 見えている原因・対策を実行するだけである。 やってみてダメなら別の手を工夫する。 従って、 見えている原因を列挙するだけで絞る余地がない。

  なお、 第6章の 活動のタイプを参照のこと。


  4-2-4 対策の立案
  大改善では大金の出費を伴う故に、 活動の機会は滅多にない。 一度改善したら次はずっと将来の話になるから、 対策は最善のものを実施しなければならない。

  最善の対策というのは、 可能な限りあらゆる対策を検討して、 投資額、 効果、 副作用、 操業費、 製品寿命 (投資したラインの稼動寿命) など、 あらゆる観点から評価しなければならない。

  ただ、 「あらゆる対策」 とはその企業限りの相対的なものであって、 絶対的な意味での 「全ての対策」 というワケには行かない。

  4-2-5 対策の選定
  対策の立案では 、最善策を見逃さないために 、定性的・網羅的な発想が必要である。 こうしてできるだけ多くの手段を着想したら、  原価・品質・納期・安全性・環境性などを数値的に評価して 、 総合的なトレードオフによって最善策を決める。

[図表4c] 自動機の投資対効果
自動機タクト(秒) 価格(万円) 原価低減月額(万円) 評価順位
12 350 500
10 400 650
9,0 500 800
8,5 2200 600
8,0 15000 400

  数値化はトレードオフのためだから、 5段階評価を使う場合もある。

  4-2-6 目標の設定
  トレードオフによって最善策を選定しても、 その最善策が実施に値するとは限らない。

  最善策が実施に値するときは目標を設定するが、 実施に値しないと判断するときは活動の中止を宣言する。

  小改善の場合は目標の設定がなく、対策の立案・選定も大改善の場合と著しく異なる。

経営者の反省

  この「経営者の反省」は、 従来の主観説の目標概念からは得られない、 客観説に独特のものである。

[図表4d] 客観説における反省

  図表4d に沿って説明しよう。
  まず、 企画段階でニーズを明確にする。 これは主観説の目標に相当するものである。

  検討段階を終結して設定された目標が、 または、 対策を実行した後の実績が、 ニーズよりも著しく低いときは、 経営者が経営資源とその使い方につき反省すべきである。 特に、 人材の確保・育成、 設備などの現状を反省する。

  高い目標が設定されたとき、 2つのケースがある。
  結果が不満なワケではないが目標よりも相当に低いときは、 「出るはずの結果が出なかった」 のだから担当者の反省事項になる。 さらに、 結果が目標を著しく割るときは、 やはり経営資源について経営者の反省事項になる。

  客観説では 「経営者の反省」 と 「担当者の反省」 が鮮明に分離され、 問題の所在と責任の所在が明確になる。  このことが、 方針管理 で決定的な意味を持ってくるのである。


  4-2-7 対策の実施
 (1) 実施の許可
  対策案を選定した後、 その実施については審査部門や経営者の審査を必要とする。 なぜなら、
  1. 所定の金額を越えれば、 出費コントロール部署や責任者の許可が必要になる。

  2. コスト・パフォーマンス (成果/投資額) の見込みが甘くないか、 客観的判断を必要とする。

  3. 他部署の情報に照らして問題がないか。 例えば、 その製品の撤退や、 施策実行で電力が不足するなどの問題を事前に検討する。
 (2) 実施の計画
  実施段階では活動を具体的に特定するから、 活動の終了時まで明確な行動計画を立てることができる。 この点、 検討段階の計画と事情が違う。

  実施計画が必要になるのは、 多元的な目標項目 (費用、期間、テーマ特性の改善効果、 その他の副産物効果) を実現するように管理するためである。

  平たく言えば、 効果と納期に気をとられて出費が倍になっていた、 などという事態を防ぐためだ。  従って日程だけでなく、 総合的に計画する必要がある。


 (3) 対策の実施
  対策を実施する際に注意すべき点は、 3つある。

  1. 対策ごとに効果を確認できるように実施する。 対策ごとに効果を確認しないと、 対策についての問題点を」検討でできないからである。

    複数の対策を同時に実施すると、 判別できないことが多い。

    あらかじめ実験等によって各単独の効果を調査し、 その合計の結果とほぼ一致する場合は問題にすることもない。 また、 直交配列表を使って実験し、 「要因ABCの水準の最善の組合せがA1・B2・C2である」 等の結果を得て実施する場合も支障はない。

  1. 事後予防型の小改善 (事前に予防策を講じないで業務を開始し、 トラブルが起きることが分って遅ればせながら講じる予防活動) の場合は、 要因を絞らずに全てに対策を講ずる。

      この場合、 対策1個ずつの結果を確認することは難しい。 そこで対策をグループ化し、 どのグループを実施したときに何が起きたかを記録し、 有効な変化があったグループについてのみ改めて個別の効果を究明する。

  2. 目的とする効果に限らず、 労働安全・環境保護・省資源などの総合性について、 期待した結果となるように配慮しつつ実施する。 そのため、 チェックリストを用意する必要がある。

  4-2-8 結果の確認
 (1) 主観説の矛盾
  もともと主観説の目標は、 挑戦の対象である。 すなわち、 挑戦はするが達成するとは言っていない──という性格のもので、
  達成の対象ではないのであって、 達成率の基礎とすることは矛盾である。

 (2) 客観説の「結果の確認」
  客観説の目標は 「達成するはずの結果」 であり、 達成率の基礎である。

  また、 改善効果だけでなく、

  • 費用・環境性・安全性などの多元的な評価
  • 原因の特定
〜を確認する。 だから、 「3つの対策を講じたが、 そのうちのどれかが効いて効果が出た」 というのはマズイのだ。 原因は、 標準化する都合上、 はっきりと特定しなくてはならない。

  QCサークルなどの日常管理の改善活動では目標に設定がなく、 活動全体の評価は目標達成率はでなく、 願望 / 結果 = 満足度 で表す。 ⇒ 参照

§^o^§ 工程能力指数 Cp、 Cpk

■ 「工程能力指数は1.33 程度でよい。」 とされるのが一般だが、 実はとんでもない。 このことを説明する前に、 初心者のために工程能力指数を解説しよう (右図参照)。
  寸法規格があって、 下限値SL、 基準値(中央値)SC、 上限値SU が決まっている。
規格幅  T=SU−SL
  測定値がこの範囲内であれば合格だが、 多数の現品の測定値にはバラツキがあるから、 「バラツキを考慮してもほぼ全てがこの範囲に入っている」 という保証がないと安心できない。 その安心度が工程能力指数である。

 特に操作していない測定値は正規分布に従うとみなして実用上支障がないとされている。


  そこで標準偏差を σ として平均値 μ の片側に 3 σ ずつとって、「μ±3σ」 の範囲に入る確率は、 正規分布表から 99.7% であることが分かる。
  従って、 安心度は、 規格幅 T が 6 σ の何倍あるかという計算で示すことができ、    
Cp (工程能力指数)= T / 6 σ
と表すことが出来る。 そして、 T =8 σ もあれば安心だから、
Cp ≧ 8 σ / 6 σ =1.33
  従って、 実際のデータから 3σ を計算し、 これと図面等に指定した規格幅を比較し、 1.33倍 の規格幅があれば大丈夫だと判定するのである。

  以上を整理すると、

  1. Cp=T/6σ は、 規格幅Tとバラツキ幅6σ の比を表し、 バラツキの工程能力指数 という。
  2. Cp=T/6σ <1 なら、 測定値が規格幅を越えてばらつく。
  3. Cp=T/6σ =1 なら、 規格幅とバラツキ幅の間に余裕がなくトラブルを起こしやすい。
  4. Cp=T/6σ ≧4/3=1.33 なら、 バラツキ幅6σ の両側に σ 1個以上の余裕が出来るから滅多にトラブルにならない。
  5. Cpは、 測定値のバラツキ幅だけを問題にした指数であって、 「平均値μを適当な値にしたときに、 規格外れが起きない程度」 を示す指数である。

  他方、 測定データの平均値μと規格中央値SCとのずれを δ として、 平均値を考慮した工程能力指数  Cpk を使う。
  実務では Cp と Cpk の両方を求め、 バラツキの是非は Cp で判定し、 平均値の是非は 「Cp − Cpk」 で判定する。
  Cp は、 δ=0 と仮定した場合の Cpk に相当する。

  δだけずれると片側の余裕が δ だけ減るから、 対象性を維持すると両側で 2δ だけ減る。

  故に、
Cpk=(T−2δ)/ 6σ
  ここで、 2δ=TK と置けば、
Cpk=(1−K)T/6σ
  これはつまり、 片方の余裕が減れば、 その余裕の少ない方の安心度で代表するということである。

  以上が 工程能力指数 の概要だが、 これも3シグマの応用で、  守りのQC手法 の1つである。


  Cp、 Cpk の計算自体は特殊な Excel ( Down Load )をインストールして、  Excel を開いて 「ツール(T)」 → 「工程能力指数(K)」 をクリックして簡単に求めることが出来る。  実務で最も問題なのは 標本数n をどうするかである。 多い程よい、 20個は必要、 100個がよいなどと言われても困ってしまう。

  そこで Y.Swetake 氏の指導を仰いで図のような結果を得た。 これだと、 (ここがこのコーヒータイムの結論なんだけど) 母集団の工程能力指数 Cpk≧1.33 だから安心とするためには n=10 個近辺で、Cpk=1.8 ぐらいは必要だと分る。

  少数のデータから求めた値が Cpk≧1.33 だ、 というだけではダメである。


  データ数が少ないと標準偏差σの計算値が不安定ということで、 普通、 50〜100 個のデータが必要とされる。 つまり、 ヒストグラムを作ったときに、 少なくも 「山の形」 が見える程度でないと標準偏差が確定しない。

  そこで、 何とか少ないデータ数で計算できないかと考える訳である。 その特性に合った最少のデータ数は、 どうやって求められるか?

  私が使っているのは、 漸近線を求める方法である。

  「最初10個でσを計算し、 第2回目は20個で、 第3回目は30個で、〜」 という具合にデータを10個ずつ増やして行き、 Excel で自動的にσ値を折り線グラフにプロットする。

  あるところまでデータ数を増やすと僅かな変化しかしない飽和状態になるので、 そこで計算すれば Cpk=1.33 で十分であろう。

  ただし、 20個のデータで 「全くダメ」 なものは、 そのまま100個にデータを増やしてもダメである。

  20個のデータで 「ぎりぎり」 とか 「ほぼOK」 なら、 さらにデータを増やして判断する。

  以上の μ、 σ、 Cp、 Cpk の値はエクセルで簡単に求めることが出来る。

  私は、 20個のデータで Excel で Cp と Cpk の両方を求めて、 バラツキは Cp で判断し、 平均値の影響は Cp−Cpk で判断する。

  そしてダメなときは、 ヒストグラムを見て、 形と平均値とバラツキの状態を観察するのである。 勿論、 ヒストグラムも Excel で自動的に作成する。

  中でも、 形に異常 ( 離れ小島、二山 など) があるときは、 これを解消することが先決問題になる。

  4-2-9 標準化と効果の定着 (歯止め)
  改善効果を維持するため、 対策の実施を 標準化 する (工程標準等の規則に定める)。

  職場の責任者がその標準に基づいて指導し管理するから、 責任者の承認を得ずに小集団などが標準化をすることは許されない。

  また、 単に標準化したというだけでは、 まだ半分である。

  根本対策を決めること、 および、 その決めたことの実施を確保するような工夫が必要になる。
  1. なぜなぜ分析 (なぜなぜ5回) で根本原因にたどり着いて標準化すること。
  2. 工程FMEA によって、 決めたことの実行を確実にすること。
 「結果の確認」 原因を明確に特定するのは、 原因についてなぜなぜ分析を行うためだ。


  4-2-10 担当者の反省
  達成率が低いのは担当者の見積もりの失敗だから、 担当者が反省する必要がある(図表4d)。

  もし、 発表すべき反省事項がなければ、 将来の抱負を述べる (将来に対する反省)。

  小改善は目標がないから、 この意味の (達成率に関する) 反省は敢えてする必要はない (任意の反省 → 7-3-4 参照)。

  担当者の反省事項の明確化は、 裏を返せば、 経営者の反省事項の明確化である。


§^- 担当者の反省

 小改善 (小集団活動) での反省は、 ご本人達が内心で反省することは大いに結構だが、 「よかった点、 悪かった点」 を挙げた反省文の発表は止めて欲しいものである。

  なぜなら 「よかった点、 悪かった点」 という判断は非常に難しく、 「どう反省したら格好いいか」という体裁問題になるからだ。 いわば公開を前提に書いた日記のようなもので、 本当のことが書いてあるとは思わない方がよい。

 ところが、 大改善に関する担当者の反省は、 極めて重要な位置付けとなる。

  担当者の反省の対象は 「設定した目標と実績の差」 だから、 結果推測の確度が問題になる。

  純粋技術的な課題や問題は、 実験や計算やシミュレーションで、 結果について相当に確度の高い推測が可能である。

  しかし、 「売上げの向上」 のような方策について、 確度の高い推測は困難である。 それでも 「実現する結果の保証」 といえるのか?

  市場実験やアンケート分析などの一応確立した手法によって得た結論は、 採用に値すると評価する限りは目標の基礎にするしかない。

  そして的中率が悪ければ、 市場実験やアンケート調査の方法を反省することになる。 こうして予測手法も、 標準化及び管理サイクルを通じて経営資源として充実させて行くことになる。


 4−3  8Dプロセス

  欧米では次に示す Eight Disciplines Problem Solving Process という手順を用いることが多いが、 これは日本でいう問題解決型のQCストーリーである。 ただ、 「目標の設定」や大改善と小改善手順の違いも明らかでなく、 対策先行型、 事後予防型、 課題達成型との関係を記述しないから実用に支障がある。

  1. チームの結成(Use Team Approach)
    その問題を解決する知識・技術・能力を有する少人数のチームを結成し、 代表者を選ぶ。

  2. 問題の把握(Describe the Problem)
    問題を定量的に記述し、 その問題によって被害を受けている内外の顧客を明確にする。

  3. 臨時処置(Implement and Verify Short-Term Corrective Actions)
    最終的な解決まで、 臨時の処置を講じて顧客を被害から守る。 また、 その処置の有効性を実証する。

  4. 根本原因の追求(Define and Verify Root Causes)
    疑わしい要因を挙げて根本原因かどうかテストし、 根本原因が見つかったら、 対策案を明示する。

  1. 対策の検証(Verify Corrective Actions)
    対策の有効性を実証し、 有害な副作用がないことを確認する。 また、 それでも解決しないときのために別案を用意する。

  2. 対策の実施(Implement Permanent Corrective Actions)
    恒久策を実施する。 根本原因の除去を証明するため、 実稼動管理を行なう。 生産に移行したら長期効果を監視し、 必要に応じた管理をする。

  3. 歯止め(Prevent Recurrence)
    その問題や類似の問題を再発しないよう、 仕様書・フロー図・手順書・作業訓練を見直す。

  4. 成果の確認と公表(Congratulate Your Team)
    チームの共同作業の成果を確認し、 公表し、 知識や経験を分かち合う。


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